世界最大のハードウェアシティ、深圳

世界最大のハードウェアシティ、深圳(シンセン、シェンジェン)をご存知ですか? 場所は香港の隣、羽田から飛行機で4〜5時間ほどです。LCCを使えば、往復3万円強で、気軽に訪れることができます。日本から行く場合は、深圳に直接入るよりは、香港経由の方が便利でしょう。

screen-shot-2016-12-02-at-15-42-29

市の中心部にある華強北(ファーチャンペイ)には、秋葉原の30倍とも言われる、巨大な電気街が広がっています。ガジェットや携帯を除いて、純粋に電子部品だけで比較するなら、売り場が縮小し続ける秋葉原の、数百倍の規模があります。

12523114_10208234135953118_8172146019373515994_n

parts_shop3

parts_shop2

parts_shop

parts_shop4

img_20160822_115151

華強北ではドローンが飛び交い、自転車やバイクはほぼ全て電動で、スマホ決済が普及していて、コンビニ、スーパー、ホテル、電車、映画館まで含めてほぼ全てのお店でキャッシュレスで支払いができます。東京も、世界最先端都市の一つであることは間違いありませんが、深圳ではそれとはまた違った最先端を体験できます。

深圳には電子部品街、ハードウェアスタートアップ、アクセラレータ(ベンチャーキャピタル)に加えて、郊外には工場群が地平線まで広がっています。企画、設計、試作から量産まで、一つの都市の中で完成させることのできるエコシステムが整っています。

今、エレクトロニクス系のハードウェアを開発するなら、深圳はもっとも適した都市で、シリコンバレーのエンジニアが短期間でプロダクトを完成させるためにチームで長期滞在することもあります。

目次

深圳という都市

中国本土で最も平均所得が高いといわれるほど経済発展した深圳ですが、1980年代までは寂れた漁村でした。香港に隣接しているという地の利を生かして、鄧小平によって初の経済特区に指定されてから急速に発展した、意図的に作られた近代都市です。

深圳市の面積は約2000k㎡で東京都とほぼ同じ。形も東西に長く、東京都のようです。そこに3000万人超とも言われる人々が暮らしています。全国から人が集まって出来た深圳は、広東省の海側中心部にありながら、広東語ではなく普通語が話されています。香港は広東語ですので、深圳は、広東語圏にぐるっと囲まれた、普通語都市です。

2016-05-20-2_shenzhen_tokyo
縮尺を揃えた東京都と深圳市

人口は20代、30代の若い人が中心です。深圳市中心部の居住区は、それぞれが柵で囲われていて、警備員が24時間、門の開け閉めをしています。といっても治安が悪いわけではなく、むしろ日本と同等ともいえる治安の良さを誇ります。スリなどは多少あるものの、女性が真夜中に一人で歩いていても、身の危険を感じることはないでしょう。

1月に僕が滞在した場所では、柵で囲われた広大な敷地に、30階建てくらいの高層マンションを100本くらい立てて、その中に小学校を1つ、中学校を1つ、幼稚園を2つ作っていました。そういう巨大マンション群が、数え切れないほどある。それが深圳中心部です。

2016-05-20-2_meilin_yichun1

2016-05-20-2_meilin_yichun2

2016-05-20-2_meilin_yichun3

2016-05-20-2_meilin_yichun4

ショッピングモールと商店街

深圳にも、カルフールやウォルマートといった、大規模スーパーやショッピングモールがあります。それと隣接して、巨大な商店街が広がっています。イオンやダイエーに駆逐されてしまった日本のパパママストアとは違い、深圳の個人商店は膨大な人口に支えられて賑わっています。大きなショッピングモールの周囲を、それ以上に大きな商店街が、無数の個人商店や飲食店を擁して取り囲みます。

2016-05-20-2_shop_street1

2016-05-20-2_shop_street2

2016-05-20-2_shop_street3

2016-05-20-2_shop_street4

深圳のスーパーでは、野菜は量り売りが主流でした。店内に計測用のカウンターがあり、そこに野菜や果物を持っていくと重さを測り、値札シールを貼ってくれます。魚も活魚が多く、小さなスーパーであっても、水槽の中に魚を泳がせています。カルフールでは生薬の量り売りをしていました。さすが漢方(中国医学)発祥の地です。書店でも本草綱目(ほんぞうこうもく)という、中医薬学の根幹となる400年前の本が目立つところに置かれていて、生活に根付いていることをうかがわせます。

2016-05-20-2_vegetable1

2016-05-20-2_vegetable2

2016-05-20-2_fish1

2016-05-20-2_fish2

2016-05-20-2_fish3

2016-05-20-2_medicine1

2016-05-20-2_medicine2

2016-05-20-2_honzou

緑豊かなガーデンシティ

何もないところに人口的に作られた都市のため、深圳中心部は大きな公園が数多く点在しています。地図でみると、公園の多さに驚かされます。その一つひとつが、管理の行き届いた非常に綺麗な公園です。休日ともなると、たくさんの人が公園に繰り出します。大きな音で伝統音楽を鳴らしながら散歩をする老人、ダンスをする集団、歌っている人、バドミントンをする人など、思い思いに過ごしています。禁止事項の多い日本の公園よりも、市民との距離が近いようです。

中国では、他の人が何をしているかは、誰も気にしません。人に迷惑をかけないようにしようという日本人の発想とは違い、隣の人が何をしていても気にしない、だからみんなが自由に過ごせる。それが中国の文化であるように思います。

park1

park2

日中の公園内では、常にスタッフが掃除をしています。ゴミがあるから掃除をしているというよりは、ゴミがほとんど落ちていない中で、わずかなゴミを探して拾い集めています。

公園外にも、ゴミはほとんど落ちていません。街のいたるところに、リサイクル用とそれ以外に分別されたゴミ箱が設置されているため、ゴミを捨てるのに困ることはありません。ゴミ箱の設置密度は東京以上で、むしろ東京の方が、ゴミを捨てるためにコンビニなどを探す必要のある、ゴミ捨て難民になりがちです。

2016-05-20-2_garbage

書店、図書館

深圳市の中心、少年宮駅の近くにある深圳書城中心城と、深圳図書館を訪れました。深圳書城中心城は、深圳でおそらく最大の大きさを誇る書店です。地上2階、地下1階で東西に長い形をしています。ハードウェアの都市だけあって、ハードの本は、質、量ともに、日本より上だろうと感じました。例えば、ハイエンド3D CAD である CATIA や SolidWorks の本の2015年版の翻訳書が、2000円ほどの価格で発行されています。日本では需要がないので出せないし、出しても7000円、8000円といった定価をつけることになるのではないでしょうか。

img_1704

img_1705

img_1706

img_1710

日本では見られない本として、各種電気製品の修理マニュアル本が売られています。液晶テレビ、エアコンなど、いろいろありますが、圧巻は iPhone の修理本です。日本で iPhone を修理するといったら、割れたタッチパネルを交換する程度のものでしょう。深圳は違います。iPhone を回路図レベルで解説してくれます。

img_1699

img_1700

その一方、ソフトウェアは東京より弱い印象です。Ruby on Rails でウェブサービスを作ることの多い僕は、ついつい Rails や Ruby の本を探してしまうのですが、深圳最大の書店に、Learn RUBY the HARD WAY と Metaprogramming Ruby 2 の、2点しか見つかりませんでした。深圳のソフトウェアエンジニアは、Ruby を使わないのでしょうか。Node.js は、5-10点くらいあったように思います。

img_1701

img_1707

img_1709

img_1711

こちらは、日本人が設計した図書館です。

img_1809

img_1798

img_1795

img_1796

img_1768

img_1797

図書館には、さすがに最新の本は見当たらなかったものの、書店から一年遅れくらいの、日本の図書館では考え難い新しさの本が並んでいます。

img_1779

img_1780

日本の図書館では見られない分類として、武器工業がありました。

img_1778

img_1785

img_1787

img_1788

img_1789

img_1792

img_1793

専門の雑誌類が充実しています。日本の図書館だと釣りとか料理などの趣味や実用系の雑誌が多いのですが、深圳の図書館には専門誌、学術誌が多く並んでいました。

img_1770

img_1771

img_1803